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2022/02/28ブログ

民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用開始について

【民事裁判書類電子提出システム(mints)について・最高裁判所規則の制定】

民事訴訟手続では、「申立てその他の申述は、特別の定めがある場合を除き、書面又は口頭ですることができる。」とされている(民事訴訟規則1条1項)。
この点、民事訴訟法第132条の10は、書面性の求められる申立てその他の申述(以下「申立て等」という。)について、最高裁判所規則で定めるところにより、電子情報処理組織を用いてすることができる旨定めている。
令和4年(2022年)1月14日、民事訴訟法第132条の10第1項に規定する電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立てその他の申述等に関する規則(令和4年(2022年)最高裁判所規則第1号)(以下「本規則」)が定められ、同日公布された。また、本規則から委任を受けて制定された民事訴訟法第132条の10第1項に規定する電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立てその他の申述等に関する規則施行細則(令和4年(2022年)最高裁判所告示第1号)(以下「本細則」)も同日に告示された。

本規則及び本細則の内容は末尾参照。

【民事裁判書類電子提出システム(mints)について・システムの概要】

民事裁判書類電子提出システム(通称「mints(ミンツ)」)は、ファクシミリ送信により裁判所に提出可能な裁判書類についてインターネットを用いた提出を可能とするものである。
当事者は、インターネットに接続された端末があれば、ウェブブラウザ上で利用することができる。特別なアプリケーションのインストールは必要とされていない。
mintsの主な機能としては、
①電子データのアップロードによる書面等の提出、
②アップロードされた電子データの閲覧・ダウンロード・印刷
③受領書面の自動作成とアップロードによる提出が挙げられる。
最高裁判所は、mints操作説明動画をYouTubeにても配信している。最高裁判所のYoutubeへのリンク

受領書提出編、ダウンロード編、サインアップ編、アプロード編が閲覧できる。
mintsを利用しようとする者は、ユーザ登録(識別符号を取得するための手続)を行う必要がある((NBLNo.1212「民事裁判書類電子提出システム(mints)の運用開始について」)。
当事者が具体的な事件においてmintsを利用するためには、裁判所において、当該事件においてその当事者がmintsを利用できるよう、識別符号と事件情報とをシステム上関連付ける設定を行う必要がある。裁判所は、mintsの利用を相当と認める事件について当事者の関連付けを行うこととなる。
具体的な事件について当事者の関連付けが行われると、当事者は、mintsのお知らせ画面及び登録されたメールアドレスに送信されるメールにより当該事件の当事者(訴訟代理人)として登録された旨を知ることができる。
それ以降、当事者がmintsにアクセスし、識別符号・暗証符号の入力や多要素認証を経てサインインの上、書面等に係る電子データをアップロードすることで、裁判所に対する当該書面等を提出することができる。
当事者は、「主張書面」、「書証の写し」、「証拠説明書」、「その他の書面」又は「参考書面」のいずれかの書面種別を選択して書面等の電子データをアップロードすることができる。このうち、「主張書面」、「書証の写し」、「証拠説明書」又は「その他の書面」を選択してアップロードされる電子データについては、裁判所において書面に出力した上で訴訟記録として取り扱われるものであり、A4サイズのPDFファイルのみがアップロード可能な仕組みになっている。
書面等の電子データがアップロードされた場合、当該事件に関連付けがされた当事者に対し、mintsのお知らせ画面及び登録されたメールアドレスに送信されるメールによりアップロードされた旨が通知され、当事者は、アップロードされた電子データをmints上で表示して閲覧するほか、自らのパソコンにダウンロードしたり、印刷することができる。そのため、mintsにおいては、準備書面の電子データをアップロードすることで相手方当事者に対する直送を行うことが可能となる。
mintsは、甲府地方裁判所、大津地方裁判所の2庁で実施され、その後、知的財産高等裁判所、東京地方裁判所(商事部及び知的財産専門部)、大阪地方裁判所(知的財産権専門部)においても運用が開始される予定である。

弁護士 鈴木一 

【参考】

[令和4年最高裁判所規則第1号]

民事訴訟法第132条の10第1項に規定する電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立てその他の申述等に関する規則

電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立て等の方式に関する規則(平成15年(2003年)最高裁判所規則第21号)の全部を改正する。

(電子情報処理組織を用いてすることができる申立て等)
第1条 民事訴訟法(平成8年(1996年)法律第109号。以下「法」という。)第132条の10第1項の規定により電子情報処理組織を用いてすることができる申立て等のうち、民事訴訟規則(平成8年(1996年)最高裁判所規則第5号)第3条第1項の規定により書面等(法第132条の10第1項に規定する書面等をいう。以下同じ。)をファクシミリを利用して送信することにより裁判所に提出することができるものについては、次条第1項及び第2項に規定する方法により、電子情報処理組織を用いてすることができる。ただし、当事者双方に委任を受けた訴訟代理人(法第54条第1項ただし書の許可を得て訴訟代理人となったものを除く。)があり、かつ、当事者双方において電子情報処理組織を用いて申立て等をすることを希望する事件その他裁判所が相当と認める事件における申立て等に限る。
2 法第132条の10第1項の規定により電子情報処理組織を用いて民事訴訟に関する手続における申立て等を取り扱う裁判所が定められたときは、最高裁判所長官は、これを官報で告示しなければならない。
(電子申立て等の方式等)
第2条 前条第1項の規定により電子情報処理組織を用いてする申立て等(以下「電子申立て等」という。)は、最高裁判所の細則で定めるところにより、当該電子申立て等をする者の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)から電子情報処理組織を用いてしようとする申立て等に関する法令の規定により書面等に記載すべきこととされている事項を入力する方法により行わなければならない。
2 電子申立て等は、最高裁判所の細則で定めるところにより付与された識別符号及び最高裁判所の細則で定める方法により設定された暗証符号を前項の電子計算機から入力する方法により行わなければならない。
3 前条第1項の規定により電子情報処理組織を用いてすることができる申立て等のうち、当該申立て等に関する民事訴訟規則の規定に提出すべき書面等の通数が規定されているものについて電子申立て等がされたときは、当該規定に規定する通数の書面が提出されたものとみなす。
4 裁判所は、必要があると認めるときは、電子申立て等をした者に対し、当該電子申立て等に使用した書面を提出させることができる。
(氏名または名称を明らかにする措置)
第3条 法第132条の10第4項に規定する氏名又は名称を明らかにする措置は、前条第2項の識別符号及び暗証符号を電子申立て等をする者の使用に係る電子計算機から入力することとする。
(電子情報処理組織による文書の写しの提出)
第4条 第1条第1項ただし書に規定する事件における民事訴訟規則第137条第1項(同規則第147条において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による文書の写しの提出は、同項の規定にかかわらず、電子情報処理組織を用いてすることができる。
2 法第132条の10第3項、第5項及び第6項の規定並びに第2条の規定は、前項の規定による文書の写しの提出について準用する。この場合において、同条第1項中「電子情報処理組織を用いてしようとする申立て等に関する法令の規定により書面等に記載すべきこととされている事項」とあるのは、「当該文書をスキャナにより読み取る方法その他これに類する方法により作成した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)」と読み替えるものとする。
(書類の送付の特則)
第5条 第1条第1項ただし書に規定する事件における直送(当事者の相手方に対する直接の送付をいう。)は、民事訴訟規則第47条第1項に規定する方法によるほか、当事者が第2条第1項及び第2項(これらの規定を前条第2項において準用する場合を含む。)に規定する方法により送付すべき書類に係る情報を入力し、これを裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(記録された情報の内容を相手方が閲覧又は複製することができるものに限る。)に記録する方法によりすることができる。
(適用除外)
第6条 民事訴訟に関する法令の規定が適用され、若しくは準用され、又は民事訴訟の例によることとされている裁判所における民事事件、行政事件その他の事件に関する手続のうち、法又は民事訴訟規則の適用を受ける民事訴訟手続及び行政事件訴訟手続以外のものについては、この規則の規定は適用しない。
(細則の官報告示)
第7条 最高裁判所長官は、第2条第1項及び第2項の細則を官報で告示しなければならない。
附則
この規則は、令和4年(2022年)4月1日から施行する。

 

[最高裁判所告示第1号]

民事訴訟法第132条の10第1項に規定する電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立てその他の申述等に関する規則施行細則

(規則第2条第1項に規定する事項を入力する方法)
第1条 民事訴訟法第132条の10第1項に規定する電子情報処理組織を用いて取り扱う民事訴訟手続における申立てその他の申述等に関する規則(令和4年(2022年)最高裁判所規則第1号。以下「規則」という。)第2条第1項(規則第4条第2項において準用する場合を含む。)に規定する事項(同項において準用する場合にあっては、当該文書をスキャナにより読み取る方法その他これに類する方法により作成した電磁的記録)を入力する方法は、次に掲げる要件のいずれにも該当する電磁的記録を裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法とする。
一 ファイル形式がPDF形式であること。
二 出力した場合における用紙の大きさを日本産業規格A4とすること。
(識別符号の付与の方法等)
第2条 規則第2条第2項(規則第4条第2項において準用する場合を含む。以下同じ。)に規定する識別符号(以下単に「識別符号」という。)は、電子申立て等をしようとする者が、裁判所から電子申立て等のために用いる情報システム(識別符号を付与することができるもの)に接続する方法について通知を受けた後、その者の使用に係る電子計算機から、次の各号に掲げる事項を当該情報システムに登録することにより、付与されるものとする。
一 氏名
二 住所
三 電話番号
四 電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)
五 生年月日
2 規則第2条第2項の最高裁判所の細則で定める方法は、電子申立て等をしようとする者が、前項の電子計算機から、他人から容易に推測されない符号を同項の情報システムに登録する方法とする。
3 識別符号を付与されている者は、第1項の規定により登録した事項に変更があったとき又は識別符号の使用を廃止するときは、遅滞なく、同項の電子計算機から同項の情報システムにその旨を登録しなければならない。
附則
この細則は、令和4年(2022年)4月1日から施行する。

 

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